図柄表:ヒスパニア女神図柄裏:鳥占官発行地:ローマ共和国ローマ市造幣所発行年:前81年発行者:アウルス・ポストゥミウス・アルビヌス銘文表:HISPAN銘文裏:ABIN N S POST A F額 面:デナリウス材 質:銀直 径:18 mm重 量:3.38 g分 類:Crawford-372/2; Sydenham-746共和政ローマで前81年に発行されたデナリウス銀貨。ローマ史上、初めてヒスパニア女神の姿が貨幣の上に表された例である。また、セラトゥスと呼ばれる偽造防止対策と推測されるギザ加工が施されている。このデナリウス・セラトゥスは前80年前後の一定期間のみ生産され、それ以降は発行されなくなった。おそらく、職人の作業負担が多く、生産量が落ちること、量目の調整に難しさがある点などがネックになったのだろう。発行者のアウルス・ポストゥミウス・アルビヌスは、デキムス・ユニウス・ブルートゥス・アルビヌスの養父にあたる。アルビヌスはカエサルの暗殺者の一人で、マルクス・ユニウス・ブルートゥスの従兄弟にあたる。カエサルが最も信用し、重用した人物は、実はマルクスの方でなく、アルビヌスだった可能性が高い。というのも、アルビヌスはオクタウィアヌスの後見人に指名され、オクタウィアヌスに万が一があった場合はカエサルの莫大な遺産を継承する第二相続人にも指名されていたからである。本貨は、発行者の先祖ルキウス・ポストゥミウス・アルビヌスが前179年に第1次ケルティベリア戦争でヒスパニアのルシタニ族を制圧した武勲を称えた意匠である。鳥占官の姿は、ルキウス・ポストゥミウス・アルビヌスが鳥占官の役職に就いていたことを示すもので、彼の姿を描いている。イベリア半島に位置するヒスパニアは凶暴且つ強靭な先住民族がおり、ローマ人は共和政期に属州への併合に成功したものの、その歴史を通して常に彼らに手を焼いていた。特にヒスパニアの民は武器に優れた。ローマ人が戦闘で愛用したグラディウス・ヒスパニエンシスも同民族のものから着想を得ている。ヒスパニアには険しい山岳地帯が続くエリアもあり、さすがのローマ人もこの一帯には侵入できず、大部分は掌握したものの、最後まで完全制圧は叶わなかった。2世紀までにはイタリアの新興貴族が住み着き、五賢帝時代のトラヤヌスやハドリアヌスが同地の出身者である。
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