黄の芯にクリアな薄緑・緑と不透明赤の細線で螺旋紋、1-4C制作細身の管状ローマン

本品は、細身の管状ローマンで、ローマン・ビーズの最盛期といえる1-4C頃に制作されたとされます。
　片側の穿孔面で見られますように、黄の土台に細くて多数の、クリアな薄緑の線とクリアな濃緑を巻き、不透明赤茶の太め線を1本施しています。他方の穿孔面でも、黄の土台は見られますが、緑の線は芯近くまで深めに施され、緑ガラスが芯孔に厚めに見られます（7、10枚め）。これらの多数の線は黄の土台の上に乗せられ、このため胎は凹むことになります。凹みには地中で埋まって付着した薄い灰色の粉が入り込み、緑などの細線近くに胎に付着しています。
　制作としては、細線のケーンを胎に順次、1本あるいは数本を斜めに巻くことも考えられますが、いずれにしても大変な手間がかかります。むしろ、黄の台の管玉を制作し、これに上記の色の細線を縦に置き、この管玉をまだ熱く粘着状態で、片方を器具で固定し芯軸をゆっくりと回転させれば、螺旋状の細線付きの管玉を、それほど手間をかけないで成形できます。
　1-4C頃のローマン・ビーズでは、横線紋のモザイク板を芯棒に丸めた細長ビーズが、研究書　Beads Timelineに多く掲載され、モザイク板を芯に沿って丸め両端を溶着させた縦線が残されています。これとは別に、少数ですが、本品の類例ともいえる螺旋紋の細長ビーズ（609の右）も掲載されています。
　なお、同書には、前200-前100年頃の欄に黒の胎全体に多数の細線を斜めに施した、細長の双円錐形のビーズが見られます（534番の上）。メトロポリタン美術館にも、前7C－前5C頃の、横線が20数本施された細長ビーズが収蔵されています。収蔵品では、細身の双円錐形の胎に刻まれた溝に白の細線がうねるように埋められています。
　本品は、これらの胎に白い細線を一筆書きの様に埋めたビーズと異なり、胎の黄にクリアな緑など多色の線を加えて管玉を作成し、この管玉をねじって成形した、渋く落ち着いた色合で、細線のうねるような螺旋紋が美しいローマン・ビーズです。同時に、1-4Cの線状ケーン利用という、ローマ期の制作法の1つを伝えくれる、細身の管玉です。
サイズ　高さ　約20㍉弱　幅（上端）　約4㍉弱　孔径　約2㍉

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